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新規事業立ち上げにおけるブランド化とプロセスエコノミーの活用方法

2021/09/13
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今、モノを作るだけでは売れない時代になりました。
あらゆる情報がインターネットを介して手に入るようになることで、どの分野でもある程度のクオリティが担保されるようになり、プロダクト・サービスがコモディティ化しています。
※新規事業立ち上げの失敗例はこちらの記事をご参照ください

普通に生活する上では、もうほとんど不便なものがなくなってしまったため、顧客満足度の価値は機能的なものから違う方向へと変化していきます。
それは、コトラーが提唱したマーケティング3.0でもあるように、「参加価値」や「共創価値」です。

人種差別が問題となれば、企業はそれに対して商品を売るためのCMではなく、「私たちは社会をより良くする体現者だ」と伝えるメッセージを出す。
それを受けてかっこいい、共感すると感じた人たちが、その企業の商品を買う。

このような流れが一般化してきました。

そして、その次のマーケティングとして提唱されているのが、マーケティング4.0です。
マーケティング4.0では消費者はただ消費するだけではなく、企業にミッションに共感し、さらに活動に参加をする。
つまり、実際にプロセスを歩むことに価値を感じていることを指摘しています。
事例としてPatagoniaやスノーピークなどが挙げられる

上記の流れを受けてこの記事では、私たちはどのようなことを意識して実際の仕事(マーケティング)をしていかなければいけないのかを考察していきます。
参照 「プロセスエコノミー あなたの物語が価値になる

この記事はこのような方向けに書いています
  • マーケティング関係者
  • これから新規事業を始める方

 

プロセスエコノミーについて説明

 まずタイトルにもつけた「プロセスエコノミー」という言葉について説明していきます。
プロセスエコノミーとは、起業家のけんすうさんが提唱した概念で、最終アウトプットするまでのプロセスに価値がついて、そこで経済圏が生まれるというものです。
例えば、昔からある形として、Nizi Projectのような、最終デビューまでの過程に価値をつけた「プロセスをパッケージ化してアウトプットしている」ドキュメンタリーなどがあります。
情熱大陸なども同じ部類かもしれません。

上記のようなものがより普遍的になり、わざわざドキュメンタリーというパッケージにしなくても簡易的な過程の発信が盛り上がって価値となっていくイメージです。
インターネットとSNSの普及によって、現在はプロセスを垂れ流している(今までのドキュメンタリーのようにしっかりパッケージしなくても)だけでも課金されるのではないかとも言われています。

コミュニケーションがかなり強力なコンテンツなため、このようなことが起こります。
ゲーム実況やライブ配信アプリなど人気からも伺えるように、コミュニケーションには異常な力があります。
経験ある方も多いと思いますが、ライブにコメントしてそれに返信してくれただけで、めっちゃ嬉しいんですよね。

 

プロセスエコノミーの3つのメリット

  1. 最終アウトプットが出る前からお金が入る
  2. クリエイターの寂しさの解消
  3. 長期的なファンを獲得できる可能性が上がる

 

実際の現場の仕事として、すぐにメリットを享受できそうなのは1と3ですね。
1は新規プロジェクトの企画段階から、マネタイズポイントがあることによって、人件費の創出や広告費の増額などにより、リスクを減らしてプロジェクト成功率を高めてくれることが推測できます。
また、定期通販のような広告費の増減によってキャッシュフローが大きく変わる商材は、早い段階で黒転する可能性を高めてくれるでしょう。

3は顧客としては、新規プロジェクト創業メンバーに近いような感情になることから、その他プロダクトにない愛着を感じることによってLTVが大きくなる可能性があります。

 

自分が経験した実例、失敗例

この章では、自分が新規プロジェクトで実際に失敗したマーケティングについて、話していきたいと思います。
※都合上詳しい商材名は控えさせていただきます

とあるプロジェクトでは、まだ何を売っていくかが明確に決まっていない状態から始まりました。
そこで、今の日本の市場ではこれから何が伸びていくのかを、さまざまな分析ツールや市場に出ている情報を掛け合わせながら、攻めるべき商品を選定していきました。
その中から顧客がいるボリュームゾーンを探し、需要が顕在している商品を制作するというものです。

ここまで本文を読んでくださった方なら分かると思うのですが、この時点でこのプロジェクトはコモディティ化し価格競争に巻き込まれる未来が見えています。

簡単に商品を真似できるこの時代に、最後までゴリゴリ100%のマーケットインでの商品作成は地雷です。
短期的に売上を作ることはできるかもしれませんが、長期的な視点を考えてブランド価値を創ると言う観点から逆行してしまいます。
実際に私はキックスターターやインディゴーゴーからの商品を参考にして、需要がありそうな商品をピックアップしていました。そして、その商品の形を少しイジって商品化しようとしていました。
これを巷では「キックスターターの悲劇」と言うらしいです…
上記のことに途中から気づいて、機能的価値以外の価値を掘り下げてプロジェクトを進めるようになりました。
新規事業創出では、マーケットインと自分たちの思い(エゴや偏愛のようなもの)の割合をうまいことミックスさせてプロジェクトを進めていく必要があります。

 

プロセスエコノミーはどのように活用していくのか

では実際に、仕事のプロジェクトでプロセスエコノミーの考え方を活用していくにはどのようにしていけば良いのでしょうか?
個人で活動しているアーティスト(漫画家、音楽家など)にプロセスエコノミーを取り入れるのは容易に想像が付くのですが、会社としてのプロジェクトに取り入れることを考えると少し頭を捻る必要がありそうです。

成功事例としては

  • BTS
  • 北欧、暮らしの道具店

などが挙げられます

BTSは「ARMY」と呼ばれるファン達が自分達でクラウドファンディングをして広告を打ったり、youtubeにダンス動画をあげたりしてその魅力を発信していく。
北欧、暮らしの道具店はyoutubeでなぜこの道具を仕入れてきたかの思いを語ったり、ドラマシリーズ「青葉家のテーブル」を作成し、ブランドの世界観を発信しています。

企業側はなぜやるのかのプロセスを共有し、消費者はそのストーリーを楽しむ。
商品を買うことがそのストーリーを楽しむチケットのようなものになっていく世界を実現させています。

しかし、企業側としては先の見えない投資はなかなか難しいものです。
事例であげているものもかなり大規模で想いもかなり強そうなコンテンツです。

中小規模の新規プロジェクトでどう活かしていけば良いのか、この文章を書いている途中ではどうも浮かんできません。
ですが実際、今回のプロジェクトではオフラインの体験価値を意識した売り方を強めていますので、あれこれやってみて、その結果をまた改めて共有しようと思います。

 

ブランド作りにおける自分の見解

この章では「ブランド作り」に関しての個人的な考えを書いていきたいと思います。
※前提として一定のクオリティ・技術、技能がある

上記まででは、プロセスエコノミーから「共感」というワードが肝になっていました。
共感には大きく2つの意味があると言われており、1つは「シンパシー」。もう1つは「コンパッション」です。

  • シンパシー・・・同意、応援するようなイメージ
  • コンパッション・・・情熱に寄り添い共に…のようなイメージ

この2つで日本人が共感と聞いて思い浮かべるのは「シンパシー」の方だと思います。
プロセスエコノミーもシンパシーを軸にして考えるのが、1番わかりやすそうです。

ここで疑問に思ったのが、シンパシーから憧れられるようなブランドは生まれるのか、もっと言えばプロセスエコノミーから、俗に言う「ブランド」と言われるようなものは出てくるのかということです。
個人的には、憧れられるようなブランドを作りたい人です。
純粋にカッコいいし、ロマンを追い求めていきたいです。

商売という観点から見ても、憧れを作るというのは付加価値をかなりつけられるため金額面を見ても取り入れたい要素です。
となった時、どうすればブランドに憧れを取り入れられるのかとプロセスエコノミーの話を聞いた時から思っていました。

ブリーチの藍染先生は、憧れは理解(共感)から最も遠い感情だと仰っていました。
この言葉をそのまま信じるならば、プロセスを見せて共感してもらいブランドを作るという行為からは、憧れられるブランドを作ることはできないのではないか、ということです。(憧れられるブランドを作りたいわけではないならば全然良いです)

そもそもマス向けのブランドとラグジュアリーブランドではブランド作りの入りから違うことは、ラグジュアリーブランドの歴史を見ても明らかです。
ラグジュアリーブランドを創ろうと思ったら、プロセスエコノミーを利用するという手段は取らない方が良さそう気がします。
違うアプローチを取らなければならなそうです。

しかし、モノが溢れかえっている現代では、どれだけ拘っているかを伝えるだけでは埋もれてしまうのも現実です。
そこでブランドの付加価値を高めるために考えていたのは、共感から憧れへ途中でスライドさせるという方法です。

上記については、とある漫画家さんの記事で読んだことなのですが、漫画のキャラ作りのポイントは「共感と憧れ」だそうです。半分は読者にリアルで共感させて、もう半分は読者を突き放す。
主人公を作るために、「何でここで立ち上がれるんだろう?」と感じさせて憧れさせる。
半分はキャラクターに自分と似ている部分を作って、もう半分は引っ張るイメージを作るのがコツなのだそうです。

悪役を作る場合は、半分共感させて残りは違和感を与える。
論理では理解できるのだけれど、「それはちょっと違うだろ」と思わせるのだそうです。
HUNTER×HUNTERのヒソカやメルエム、ジョジョの奇妙な冒険のDIOのような悪役のカリスマ的な存在を紐解くと、共感できる部分はあって理解できる部分もあるけど、自分とは強烈にズレている部分が作られていることで、一気に読者を引き離しています。(メルエムの場合は順番逆ですけどね)

 

この記事を読んで、ブランド作りにも当てはめることができる考え方なのではないかと思いました。

例えば、エシカル的な考え方をしているアパレルブランドがあったとして、その環境問題を考えているブランドの考え方には共感(シンパシー)できるけど、そのブランドのイメージビデオが超リゾート地みたいなところで撮影されていたり、パリの超おしゃれな街並みで撮影されている、みたいな共感と憧れを混在させるイメージですかね。

それか、最初の立ち上がりはプロセスエコノミー的な感じで共感を得られながらブランドが立ち上がるんですけど、あるタイミングからなんでここまでできるの?と思わせる何かを取り入れて憧れへスライドさせる、とかもいいかもしれません。

上記は漫画の主人公などによく見られる、共感から憧れへのスライドにしかたによく似ています。
僕のヒーローアカデミアで、ルミリオンがオーバーホールと戦った時などは思いっきり共感から憧れに持っていかれてしまいました。
ちょうど自分が販売設計〜販売までを行っている自社プロジェクトがあるため、半分共感と半分憧れというのを意識してブランド作りをしていこうと思います。
結果は半年後にまた記事を書けたらと思います。

 

最後に

プロセスエコノミーについて色々書いたり、マーケティングに変遷について書きましたが、要は、人がどこに価値を感じるか、どこで感情が動いているのかを考えればその時代時代のマーケティングが見えてくることに気づきました。

アナリティクスの数値を見ることもすごく大事ですが、同時に人の感情がどのように動いているかを細かく分析していくことも重要だと思います。

なかなかすぐに仕事には取り入れにくい内容を書きましたが、モノを売る仕事をしている人に1つでも役に立つことが書けていれば幸いです。

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