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【2023年最新】コロナを経たEC市場規模変化から考えるこれからのECに必要なこと

2023/05/09

こんにちは、chipper西田です。
今回は経済産業省のレポートを元に、日本国内のECの市場規模の変化と出店事業者数の変化を分析しながら、これからのEC事業に必要な要素を明らかにします。

需要と供給の観点をわかりやすく説明し、データから現在の需給バランスを読み解きます。需給バランスについても解説を入れますので、経済学や学校の授業にアレルギーがある人も、できれば最後までついてきていただけると嬉しいです。

この記事はこのような方向けに書いています
  • 現在ECのマーケティングに携わっている方
  • 現在EC事業の責任者である方
  • これからEC事業を始めたいと考えている方

EC市場規模の推移(2017年から2021年)

物販系ECの市場規模推移

まずは需要の側面を見ていきます。需要とは「消費者がどの程度ECでモノを買ったのか」ということです。

経済産業省のレポート「電子商取引に関する市場調査」によると、日本国内の2017年の物販系ECの市場規模は8.6兆円で、EC化率は5.79%でした。
2021年のEC市場規模は13.2兆円となっており、EC化率は8.78%となっています。

2017年と比較すると2021年までの成長率は+54.5%となっており、これは中国の10年間の経済成長率である+10.6%の約5倍となっています。比較してみるとわかる通り、大きく増加しています。

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EC化率とは、全体の流通総額に対してのECの流通額のことです。

総流通額×EC化率=EC市場規模 という計算式のため、ECの市場規模をEC化率で割り出すと全体のBtoCの総流通額が見えます。

2017年:8.6兆円÷5.79%≒148.5兆円

2021年:13.2兆円÷8.78%≒151.3兆円

ということでBtoCの総流通額の成長率は、1-151.3兆円÷148.5兆円≒1.8%となっています。成長はしていますが、先述したECの成長率と比べると寂しい数字のように感じますね。

下記は経済産業省のレポートから抜粋したグラフとなります。

物販系分野のBtoC-EC市場規模及びEC化率の経年推移

ジャンル別の市場規模

こちらをジャンル別で表形式でまとめました。
多少の集計誤差があるため少しだけ合計数値が異なりますが、ご了承ください。

ジャンル別EC市場規模変化

全般的に伸びていますが、最も伸びているジャンル・分野が食品系です。
これはコロナ禍によって、スーパーやコンビニでの需要がそのまま通販に置き換えられたため伸びたと予想されますが、これは一種の特需状態とも言えます。
2022年の数値は現時点で未発表ですが、コロナの収束に伴い縮小傾向となっていることが予想されます。

EC市場規模推移からわかること

ECは市場規模としては大きく成長している市場、ということがわかります。
コロナウイルスという、EC業界の成長には意図せず貢献した要素も追い風となり、EC業界は2021年まで大きく拡大したと言えるでしょう。

この章でのまとめは「コロナを経てECの需要が5年間で1.5倍に伸びた」と捉えてください。

 

EC店舗数の推移(2017年から2021年)

さて、需要が増えたということがわかった次は供給を見ます。供給とは、「どの程度の会社がECをやっている(やり始めた)のか」ということです。

EC出店事業者の推移

ECをやっている企業数の推移を計測するのは難しそうです。ただこの場合は「消費者が認知しているEC購買場所」という観点で見るため、モールや自社ECの出店数推移で見るのが良さそうです。それでしたらモールやカートの会社が発表している数字から統計が取れそうです。

年ごとに統計を取っているサイトを見つけましたので、そちらから数値を拝借させていただきます。

カート別EC事業者数推移

2017年は189万店舗だったEC店舗の数が、2021年には418万店舗となりました。非常に高い成長率ですね。
特にモールが2.24倍、インスタントECが2.3倍と大きく成長しています。
これは「コロナで打撃を被った実店舗が、EC販売にシフトした」ということを意味しています。

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急にモールとかカートとか、用語がわからないという方のために解説させていただきます。

モール:一つの大きなショッピングサイトの中に「◯◯店」などを出店できるタイプのECです。楽天AmazonYahoo!ショッピングauPAYマーケットQoo10などが代表的です。

カート:自社ECサイトを立ち上げる際に、汎用的なシステムを使って出店できるタイプのECです。ecforceShopifyFutureshopMakeshopなどが代表的です。

インスタントEC:HTML等の知識がなくても、かんたんに自社ECサイトを出店できるタイプのECです。BASESTORESなどが代表的です。

パッケージ:同じ自社ECを出店できるECシステムですが、開発会社に依頼することで独自機能を実装することができます。ecbeingebisumartなどが代表的です。

スクラッチ:ECシステムなどを使わず、カート機能から決済機能まで全て独自開発を行うタイプのECです。

EC出店事業者推移からわかること

「EC販売をしたい人の数」は大きく増えていることがわかります。
技術の発展によってかんたんにECを始められるプラットフォームが普及したという点に加え、こちらもコロナウイルスによって業態転換(実店舗販売からオンライン販売へ)を迫られた企業が多かったことが追い風になったと予想されます。

この章でのまとめは「コロナを経てECの供給が5年間で2.2倍に伸びた」と捉えてください。

 

今EC業界で起きていること

需要と供給について

今EC業界で起きていることを解説する前に、まずは需要と供給について解説します。
需要と供給をかんたんに説明すると「モノを欲しい人と、モノを売りたい人の、量の関係性」です。

オークションをイメージしていただくとわかりやすいです。
モノ(売りたい人)が多いのに、買いたい人が1人もいなかったら、価格を下落させないと売れません。
逆に買いたい人が多いのに、モノが一個しかなかったら、価格が高騰します。
でももしモノが少ないから高く売れるのであれば、もっとモノを仕入れて売ろうとする人が現れます。

つまり需要と供給のバランス曲線とは、「モノの価格はあるべき箇所に落ち着く」ということを意味しています。

更に詳しく知りたい方は、こちらのサイトが非常にわかりやすいので参考にしてください。

現在のEC業界の需給バランス

さて、ここまでお読みいただいた方はご理解いただけているかもしれません。

現在のEC業界は「超超過供給状態」となっています。

2017年から2021年までの推移をおさらいしてみましょう。
モノを買った金額(需要):8.6兆円から13.2兆円で1.5倍
モノを売りたい店舗(供給):189万店舗から418万店舗で2.2倍

コロナ禍を経て確かにECでモノを買う人は増えましたが、それに伴いECでモノを売りたい人の方が増えたのです。
つまり現在は明らかな超過供給です。

超過供給になると起きる問題

別に供給が多い分にはいいんじゃない? と思う人もいるかもしれません。
でも実は過剰な供給は、消費者にとってもEC事業者にとっても、メリットのない状態を引き起こしてしまいます。

消費者目線では、これまでは限られた選択肢の中から商品を選べばよかったところ、売る側が増えて選択肢が膨大になったため、購入に迷ってしまう状態となりました。

供給量が多くなると選択肢に迷う

つまり、より消費者にとって選ばれる商品とするための難易度が上がったということです。
これにより事業者目線では「効果の出る広告運用の難易度が高まり」「利益の出るEC事業とするための難易度が上がった」ということです。

 

今のEC事業に必要なこと

デジタルシフト・DX・AI導入が進んでいる昨今、この状態は不可逆でおそらく更に加速していく可能性もあります。
だからこそ「競合の中からどのように商品を選んでもらうか」という観点の重要性がより加速度的に増しています。

そこで、私たちchipperが、この状況だからこそEC事業で重要だと考える3つのことをまとめます。

コアターゲットとインサイトを徹底的に考える

これだけ競合が増えたため「自分がすぐ考えつくようなことは競合も考えている」という前提を持ってください。
だからこそ消費者のニーズレベルの商品や訴求である場合、それは競合との差別化になりません。

競合から抜きん出るためには、浅いレベルのニーズではなく「徹底的に考え抜いたインサイト」に対して商品を考え、広告訴求を考える必要があります。
インサイトとニーズの違いも含め、詳しく知りたい方はぜひこちらの記事をご覧になってください。

 

狭い市場でもまずはコアな第一想起・純粋想起を獲得する

ECのよくある失敗しやすい考え方の一つに「博打で大手商品と戦いに行こうとする」というものがあります。
確かにECというビジネスモデルは、店舗への配架を考えなくてもいいため、大手商品に勝てる可能性は0とは言い切れません。

しかし、逆に貴方が消費者として考えた時に「CMもやっている大手企業が作っていて、店頭で売っている商品」と「よくわからない会社が自社ECで売っている商品」とではどちらを選ぶでしょうか?

その感覚は、おそらく消費者も持っている感覚と同様です。つまり同じ商品で同じ訴求であれば、消費者は大手企業の商品を選ぶことが多いという原理原則を認識してください。

それでも大手と同じジャンルにも関わらず消費者に選ばれている有名D2Cに対しての憧れが拭えないことも理解できます。
しかし、それらの有名D2Cも最初は狭いターゲットの獲得からスタートしていることを忘れてはいけません。
①ターゲットが狭く ②競合がまだリーチしていなく ③市場規模は事業として成立し得る程度存在する という3つの要素を満たしている領域を見つけ、まずはコア顧客の第一想起・純粋想起を獲得するということを事業初期のKPIとしています。

第一想起・純粋想起の考え方については、下記記事をご覧ください。

バズる手法から逆算してブランディングを行う

供給が需要を大きく超えると起きてくる問題の一つが広告費の高騰です。広告費は基本的には入札制のため、多くの方が利用すればするほど価格が高くならざるを得ない構造となっています。
現在のECの一般的なコスト構造を考えると、広告のみで投資回収を行う場合は3〜4年程度の投資回収期間が発生する計算となります。(それすらも競合の参入状況次第で変動するため不確定ではありますが)

そのため、弊社では広告を起点としながら、どのようにバズ(自然拡散)を生み出すのかを考えながらEC事業支援を行います。

例えばこちらの商品などは、うまくバズを生み出した事例となります。(画像クリックでHPへリンクします)

MAMEIL

商品企画から携わらせていただきましたが、その段階から拡散を生み出す仕掛けを入れ込んでいます。
こちらの商品は裏側にあらゆる仕掛けを施した結果、オーガニック(営業なし)で、TBS系列のラヴィット日テレ系列のニノさんかまいたちさんのYouTubeチャンネルで取り上げていただきました。
事業設計段階から全てを設計し尽くした結果、通常は数百万支払えないと行えないプロモーションを0円で行えた、という点がわかりやすいPRポイントかと思います。

売上も正直かなり驚異的な数字ですが、あまり全てを明かすことは難しいため、もしご興味がある方はぜひお問い合わせください。

chipperではEC事業の広告支援から、トータルでの事業設計の支援まで、幅広くサービス支援を行っています。
ご興味を持っていただけた方は、下記問い合わせフォームよりお気軽にお問い合わせください。