chipperではECサイトでの集客(マーケティング)やそれに伴う売上最大化の戦略構築と実行について既存、新規構築に関わらず多くの法人様の支援を多数させて頂いております。
基本的に国内のクライアント様がメインですが一部海外クライアント様の案件も頂いており、会社の方針としても将来的な海外進出を視野にいれて活動しています。
その中でも今回は成長著しいアフリカを拠点にする企業の成長サポートに携わらせて頂いたのでそのご紹介と急成長中のアフリカ市場についてお話しします。
弊社が支援させて頂いたクライアント「MYDAWA」についてご紹介します。
ケニアの首都ナイロビに拠点を置く同国内随一のヘルスケアや日用品、医療関連製品を中心に扱うモール型ECサイトです。
2017年に設立され、通算US$8百万の資金調達を実施(2019年5月時点)、現在も規模拡大中のケニアきっての大型Eコマースです。
弊社は同サイトの売上最大化を目的にした成長戦略やそれを実現するためのKPI策定を行ってきました。
細かい点は割愛しますが、アトリビューション分析を用いた全体的な流入/離脱分析、そこから見えてきた改善点の抽出とアクションサポートをさせて頂きました。
(月間UU数は2021年7月で11.6万人と昨年対比+130%を達成しました)
▼参考記事
ECマーケティングでのアトリビューション分析について解説
▼参考記事
ECサイトにおけるレビュー獲得の重要性について【Bad評価≠悪?】
さて、ケニア(アフリカ)のECサイトということで皆さんどのようなイメージを持たれるでしょうか?
日本や先進国より機能面で遅れてるんじゃないか?
そもそも正常に運営されているの?ロジスティック(配達デリバリー)面は大丈夫?
など、恐らくアフリカ自体に後進国というイメージもありこのように考える方もおられるのではないかと思います。
ところがこのMYDAWAというサイト、先進的な機能もいくつか取り揃えており(開発中含む)、いい意味で期待を裏切られるポイントがいくつかあるので紹介させて頂きます。
MYDAWAで商品を購入した際、主な決済手段は下記の3つです。
1.クレジットカード又はデビットカード
2.モバイルマネー(電子決済)
3.保険決済
上記の手段のうち最も多く利用されているのが2のモバイルマネー(電子決済)になります。
クレジットカード決済が8割近くを占めている日本の方からしたら驚きが大きいかもしれません。
だがしかし、ことアフリカ、ことケニアにおいてはクレジットカードよりモバイルマネーの方が一般的なのです。
背景としては銀行口座の保有率が低い(ケニア:約30%)一方、携帯の保持率が非常に高い(ケニア:SIMベースで113%)という状況が挙げられます。
銀行口座の保有率が低いので後払い回収というクレジットカードのスキームは機能せず、またほぼ全ての携帯電話がプリペイド方式(事前にチャージし利用料に応じて切り崩す仕組み)故モバイルマネーでの決済がメインストリームなのです。
ちなみに通信インフラも整っており、携帯基地局の敷設を積極的に海外の会社に委託してきた背景もあり大陸広域で携帯電話が使用できる状況です。
モバイルマネーもいくつかありますが特に有名なのがM-PESAです。
Safaricom(サファリコム)というケニアの携帯会社によって運営されており、普及率は成人の96%と驚異の数字。
M-PESA
入送金や決済の簡便性に優れているのと、コンビニ等街中のいたるところにチャージできるステーションがあるので幅広い層に利用されています。
日本ではモバイルマネー決済はECで2割程度とまだまだ低く、ある意味アフリカより遅れを取ってると言える状況なのです。
さて先ほどは通信インフラの充実度に触れましたが、輸送面のインフラも実は整っています。
ケニアの首都ナイロビ圏内への配送の場合なんと注文からわずか4時間で届いてしまうのです。(8:00~20:00に注文の場合)
その他の地域でも注文後24時間以内には配送するポリシーとなっており非常に迅速です。
日本でもこのようなスピード感で配達するECはほぼほぼないでしょう。
例えばAmazonは当日配達サービスをやってますが注文を午前中に済ませることが条件で、かつ配達まで半日程度要するケースが多いです。
MYDAWAの場合より当日配達の条件が緩く設定されており、
同日中かつ超短時間で届けてしまう配送サービスは見事としか言いようがありません。
MYDAWAでは日用消費財に加えて薬(一般、処方箋薬含め)も販売しています。
え、待ってECなのに処方箋薬買えるの?という疑問が湧く方も多いでしょう。
日本では一般的に薬を買う場合、
①一般薬品の場合ドラッグストアに行く
②処方箋が必要な薬の場合医師の診療後処方箋を貰い薬局で購入
という手段が主ですから、そのような疑問が湧くのも当然かと思います。
しかしここMYDAWAでは処方箋をデータ提出することで該当薬品を購入することが出来るのです。
日本でも診療→処方箋入手→薬購入の一連の流れオンライン化はコロナ以降スタートしていますが、まだそこまで浸透していないでしょう。
一方のケニアではコロナ以前から、処方箋のオンライン化に取り組まれています。
ケニアでオンライン診療が拡大中な背景には慢性的な医療人材不足という問題があり、特に農村部ほど直接病院に出向いて医師の診療を受けるのは困難です。
他方先ほど述べたように通信インフラは充実していますから、都心部はもちろん地方の人もオンライン上で医師の診断を受けて処方箋を受け取る、そして受け取った処方箋データを基に医療ECで薬を購入するというフローが広まりつつあります。
これにより医療環境は大きく改善しており、MYDAWAもその一環として強く貢献しています。
現在取り組み中の所もありますが、いくつか民間の大規模な医療機関とも提携しており、オンライン完結型の医療享受がここMYDAWAを起点に実現できる状態です。
ここまでMYDAWAを例に、その先進性について述べてきました。
しかしケニアやその他のアフリカの国々では近年各地各業界で積極投資やイノベーションが起こっており、MYDAWAもその氷山の一角にすぎません。
医療や都市開発、物流輸送インフラや資源など各方面で大規模な開発やテックベンチャーの勃興が顕著であり、人々の生活の質も日々進化を遂げています。
アフリカは貧困地域が殆どでまともな水準の生活を送ることは困難、というのは既に時代遅れのイメージなのです。
アフリカの人々の経済力やQOLが向上するにつれEC・D2C事業も拡大の傾向にあります。
例えば南アフリカでは現地の調査団体によると2020年の同国EC市場は前年比で66%成長、約2300億円の市場規模を記録したというデータもあります。
小売店の中のEC化率でいくと2.8%、世界平均:16.1%(2020年)、日本平均:6.8%(2019年)に比べると劣後するものの、規模自体は拡大傾向でコロナの状況もあり引き続き伸びていくことが予想されます。
先ほども述べている通り通信インフラは整っておりスマートフォンの普及率が高いことを考えても、今後追い風であることは間違いないでしょう。
▼参照
http://www.worldwideworx.com/wp-content/uploads/2021/05/Exec-summary-Online-Retail-in-SA-2021.pdf
そんな中現状どのようなECサービスが有名か、MYDAWAの他にもいくつか例をみていきましょう。
事例をピックする上で外せないのが、アフリカ最大のECサービス、Jumiaです。
Jumiaは「アフリカのアマゾン」とも称されておりアフリカ54ヶ国のうち、16ヶ国で事業を展開、
その異名の通り扱う商品のジャンルも幅広く、独自の電子決済システムや物流プラットフォームを確立するなどバックヤード面も拡充しており非常に高い知名度を誇っています。
そしてモール系以外にもD2Cと呼ばれる自社ブランド製品を自社ECを通じてダイレクトに消費者に届ける企業が続々と確立。
製品のジャンルは様々ですが特に目立つのが美容・健康ジャンルです。
近年の経済力向上により人々の関心が健康や美容といった分野にも移っており、例えばケニアでは都市部を中心にフィットネスクラブや美容室が流行中。
D2C分野にもその波が押し寄せている状況で同ジャンルのD2Cブランドが複数立ち上がっています。
また、アフリカの伝統工芸品にフォーカスを当てたD2C事業も盛んです。
現地の一流伝統工芸やアート品、ファッション製品に特化したECサイト、Lago54はハイセンスかつサステイナビリティにも長けた製品がピックアップされており定評があります。
同ブランドは世界随一のファッション都市であるパリにもショールームを構えており、アフリカ発のファッショナブル製品を世界に向けて発信しています。
このように、
1.アフリカ国内でのD2C事業
2.アフリカ発の世界に向けたD2C事業
のどちらも盛り上がっている傾向にあり、海外に自社ブランドを進出させたいor海外のトレンド品を国内に流行らせたい日本企業にとってアフリカ市場は目が離せないと言えます。
D2C業界を中心にアフリカ市場が今いかに目覚ましい成長を遂げているかについて解説してきました。
しかし未だに多くの人がアフリカのことを後進国で劣等的なポジションにいると認識しているかと思います。
話は少し変わりますが昨年アメリカ、ミネソタ州でアフリカ系アメリカ人が白人警察官に首を押さえつけられ死亡する事件が発生、#BlackLivesMatter(黒人の命も大切にしよう)というハッシュタグがSNS上で幾多も投稿され社会的に一大ムーブメントとなりました。
筆者も以前アメリカに数年在住していた経験がありますが、白人が多い地域だったこともありアフリカ系アメリカ人の知人が転職の際に黒人であることがネックになる場面もある、と不満を漏らしていたのを聞いたことがあります。
もちろんそれが全てと申し上げるつもりはないものの、口にはしないが無意識に黒人を差別する風紀もゼロではないでしょう。
そうした風紀への反論として、BlackLivesMatterをきっかけに抗議のを声明を出し黒人系のデザイナーにスポットライトを当てた、コラボ商品を発表したブランドもあります。
To the black community:
We see you.
We stand in solidarity with you.
This can no longer be the status quo. pic.twitter.com/LpE7HHp3qU— Reebok (@Reebok) May 30, 2020
ただ、黒人差別に対するアンチテーゼ的な意味合いのみでアフリカ系人種発の産業にスポットライトを当てるのは、本質からズレていると個人的には思います。
もちろん、不遇な扱いを受けているものにスポットライトが当たったり差別を払しょくするメッセージを発すること自体は素晴らしいですが、
大事なのは全てのものが先入観を持たずにフェアに市場に評価されることです。
そしてフェアな目線で見た上でもアフリカは注目すべき点が非常に多い市場と言えます。
これからはアフリカ”なのに”すごいから、アフリカ”だから”すごいに変わっていくでしょう。
今回の記事はAAIC Holdings代表・椿進氏による下記書籍を多くの箇所で参考にさせて頂きました。
アフリカ大陸がどのような進化を遂げているか、具体的に分かりやすく解説されているので是非ご覧になることをお勧めします。
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⑤ EC事業構築の考え方
「1年後以降も利益の出る事業」について2つのマーケティング手法を伝授いたします