この記事はこのような方向けに書いています
- デザイン思考とは何か、概要から知りたい人
- デザイン思考の使い方を知りたい人
- デザイン思考を用いて実際にサービスを設計してみたい人
デザイン思考とは
概要
デザイン思考とは、ユーザーも気づかない潜在的なニーズ(インサイト)を見つけ出し、仮説・検証を繰り返しながら問題を定義、本質的な課題を解決するための一連の考え方のことです。
「デザイン」と聞くと、グラフィックデザインやビジュアルデザインといった「見た目をよくすること」というイメージを持つ方が多いですが、「実践 スタンフォード式 デザイン思考 世界一クリエイティブな問題解決(できるビジネス)」著者、ジャスパー・ウは、デザインの本来の意味は「設計する」ことであり、デザイン思考は設計のための思考法であると述べています。
何故必要とされるのか
私たちが製品やサービス、システムを作る場合、大抵の目的はプロダクトを使う人々の問題を解決するためです。
この「プロダクトを使う人々」を正しく理解するために、デザイン思考が必要とされています。
例えば、
- なんとなくカッコいい/可愛いモノを作りたい
- 簡単で実装しやすい
といった理由から作られたプロダクトは、実際に使うこと(問題を解決すること)が想定されていないため、この問題に対する本質的な解決に繋がりません。
「プロダクトを使う人々」を正しく理解するためには、ユーザーの視点に立ったモノづくりが必要不可欠となります。
デザイン思考は「プロダクトを使う人々」を理解するための方法であり、人々が持つ本質的な課題を解決するための考え方(マインドセット)のことを指します。
デザイン思考とアート思考の違い
デザイン思考
- 課題解決型
- ユーザやクライアントのニーズを基盤にアイデアを創出する
アート思考
- 問題提起型
- 実現性やニーズに関係なく、自分の自由な発想を起点にアイデアを創出する
デザイン思考を用いた結果、「ありきたりのアウトプット」になったという状態に陥ることがありますが、これは、デザイン思考においては大きな問題ではありません。
デザイン思考で大切なのは、「共感」と「定義」(※後述)で、本質的なニーズを見つけ出すことです。
ここでは、アイデアに斬新さやインパクトさがあるかどうかは無関係です。
しかし、問題提起がなければイノベーションは生まれないため、デザイン思考とアート思考の2つを行き来するバランス感覚も大切です。
課題解決型思考、問題提起型思考については以下の記事でも言及していますので、是非ご参考ください。
デザイン思考のプロセス(5ステップ)
1. ニーズを知る
まずはユーザのニーズを知ることから始まります。
大きなキーポイントとなるのは、ユーザが気付いていない潜在的なニーズ(インサイト)を発見するかどうかです。
今回は、「帰宅時にパートナーへ帰宅時間を知らせる」ことに困っている人を例として解説していきます。
1-1.ユーザのニーズを知るため、相手を定める(仮説ベースでOK)
例:
- 子どもを持つ共働きの親
- 専業主フとして家事育児に従事するパートナーを持つ人
- 家族・恋人・友人と同居している人
1-2.ターゲットとするユーザを観察し、ニーズを深く理解する
例:
- 帰宅時間をパートナー・家族・同居人へ知らせる必要があるが、連絡することを忘れてしまう
- (同僚と話しながら帰宅したので連絡を忘れていた、ニュースサイトやメディアのチェックに忙しく連絡を怠ってしまった等)
- いつも大体同じくらいの時間に帰るんだから察してほしいと考えている
- 帰宅時間を互いに把握したいと思っているが、一方から連絡をもらえないことで困っている
(夕飯を一緒に食べることが可能か、子どものお風呂を入れてもらえるかどうか等、帰宅後のタスク調整のために「管理」ではなく「把握」しておきたい)
memo
特に不安、悲しみ、不満に寄り添い、ユーザの潜在的な欲求を探り当てていきます。
カスタマージャーニーマップなどのフレームワークを利用すると良いでしょう。
1-3.発見したニーズと、ターゲットを取り巻く環境を整理・分析する
例:
- イレギュラーな対応が入ったことによる急な残業で連絡ができない場合
- 営業先から直帰するなど、帰宅のタイミングが本人にも掴めない場合
→確認していた帰宅予定時間にあわせてスケジュールしていたタスクがズレてしまう
memo
「○○なときは☓☓では?」という仮説を立てていきます。
情報分析で見えてきたニーズを元に観察を掘り下げ、ユーザの経験・不安・不満・会話の矛盾を深堀りし、情報を整理していきます。
ユーザでさえも気が付かないような欲求を満たすことに繋がる問題定義を行うことが重要です。
2-1.どのような状況を解決するのか、解決後はどのような状況になるのか
例:
- 自分の意志とは関係なく、自動で帰宅時間を通知することができる
- 設定した時間までに帰宅可能か否かを知らせることができる
2-3.解決すべき問題を定義する
例:
- 連絡をしないことによる不利益を、忘れた本人ではなくパートナーが被ってしまう
memo
ときには共感フェーズに立ち戻ったりすることで問題定義を繰り返し、コアとなる問題を見つけ出していきます。
3. アイデアを生み出す
3-1.仮説をより具体的にした上で解決方法を考える
アイデア1:
自分の意志とは関係なく、自動で帰宅時間を通知することができれば良いのでは?
アイデア2:
連絡時間にタイムリミットを設定し、その時間に最寄り駅(などの設定地)を通過しているかどうかを判定することで
○時に帰宅可能か否かを知らせることができれば解決できるかも?
memo
ここでは、アイデアが現実的かどうか、斬新かどうかなどあまり気にしません。
まずは思いつくままにどんどん出したアイデアの中から、使えそうなものを絞り込んでいくことで洗練されていきます。
ブレイン・ストーミングなどのフレームワークを利用すると良いでしょう。
4. アイデアを形にする(プロトタイプ)
4-1.アイデア(ソリューション)の試作
スケッチ、工作、紙芝居、紙粘土でもなんでも良いので、最速・最低限で解決策のアイデアを形にします。
ラフで素早く気軽に、トライアンドエラーを繰り返し作りながら精度を上げていくことを目的としています。
例の場合は、XDやFigmaなどのプロトタイピングツールを利用したり、IFTTTやスプレッドシートなどの既に存在するツールを組み合わせることで、アプリとして本格的な開発を行う前に、アイデアがソリューションとしての価値を持つかどうかを試すことができます。
5. アイデアを評価する
5-1.試してほしいポイントを絞り、実際にユーザに使ってもらう。
問題を解決するアイデアになっているか、ユーザに評価してもらうことで以下を検証し、定義した問題に対するアイデアとして適切かどうかを評価していきます。
- ユーザの潜在的な悩み・欲求は正しかったか
- 問題定義は正しかったか
- 実際に課題が解決できるのか
ユーザテスト時には、「このプロトタイプで何をしてほしいか」という最低限の情報だけ渡します。
そして、ユーザの体験を観察し、体験後に使い勝手や感情についてのヒアリングを行い、共感を高めることでターゲットに向けて検証・改善を繰り返していきます。
memo
解決できなかった場合は前工程に戻って再チャレンジを行い、試作とテストを繰り返します。
試行錯誤しながら、最終的にクオリティの高いアウトプットを目指していきましょう。
まとめ
デザイン思考とは、ユーザの問題を解決するプロダクトを作るために、デザイナーだけでなく事業を担うすべての人々に必要な考え方です。
デザイン思考を活用することで、複雑な問題を正しく理解し、最小のリソースで人々が望むものを作ることができます。
全てのプロセスを取り入れて実践するのは少し難易度が高いかもしれませんが、紹介したフレームワークや例から、一部でもご参考いただければ幸いです。