©︎ chipper, Inc.

イノベーションが生まれる組織の在り方。知の深化と知の探索

2021/05/22

こんにちは、chipperの十時です。
昨今、様々な外的要因の影響から本業の売上が低迷し、新たな事業創出を検討されている事業者様や新規事業後担当者様お問い合わせをいただく機会が増えてきました。

今回は多くご相談をいただく中から見えてきた、イノベーションを起こしやすい組織の在り方についてまとめたいと思います。

 

この記事はこのような方向けに書いています
  • 既存事業とは別に新規事業を立ち上げることをお考え中の経営層
  • 新規事業での組織構築に困っているご担当者様

 

なぜイノベーションを生むのが難しいのか?

本来のイノベーションの定義は「技術革新」という言葉に訳されることが多かったですが、昨今ではものごとの「新結合」「新しい切り口」「新しい捉え方」「新しい活用法」を創出することといった技術革新の枠組みに捉われない、より本質的な意味に近づいています。

イノベーションを生むことは、その組織だけなく社会に対しても大きな影響を与えるため企業にとって非常に重要なことですが、一方でゼロから新たなものを生み出すという行為は簡単ではありません。イノベーションを起こすことが難しい要因について、個人、プロジェクトチーム、会社組織の3つの観点で落とし込んでみます。

 

個人に依存する要因

何か新しい事業を始めるために1人の従業員に一任するのは、どんなに優れていても、1人の力では発想力が不足していたり、元々その方の持っていた専門性に偏ってしまうといった事が要因となり、良いアイデアが生まれない事が多くあります。

 

プロジェクトチームに依存する要因

例えば、編成するチームメンバーの多様性の欠如や、チームメンバー間の信頼関係が出来上がっていないことによる関係性の固着化されてしまった場合、互いのことが本質的に理解しあえていない状態でプロジェクトを進めることになり、正しい意味でのオープンな意見を言い合える関係ではなくなります。
プロジェクト推進におけるファシリテーションがうまくいっていないケースです。(ファシリテーションに関しての詳細は別記事で触れます。)

 

会社組織に依存する要因

会社組織全体、あるいは部署間の連携がうまく取れない結果、本来の価値以下のシナジーしか生まれない状態です。社内共有の流れがスムーズにいかないので、個人や部署単位で優れた人がいたとしても、組織全体としての最大価値を発揮できていないため、本業を超えるような新規ビジネスは生まれにくくなります。

 

共通する要因は何か?

どの要因にも共通して言えるイノベーションを阻害している課題は、既存の状況から変化が生まれにくくなってしまっている状況です。これは個人であろうが会社組織であろうが、これまでのやり方に縛られてしまっている状態でよく起こりえます。

ではなぜこれまでのやり方に縛られてしまうのでしょうか。要因は過去の成功に縛られてしまうことにあると考えています。

私が楽天で働いていた時代にも経験したのですが、当時クライアントの売上を作る成功パターンを生み出し、その成功事例を横展開する文化がありました。当然、結果が出ますし、高い目標値を達成するために繰り返し同じやり方を行なっておりました。しかし、ウェブマーケティングの世界は自分が変化しなくても市場環境がとてつもないスピードで変化をするため、数ヶ月するとその成功パターンは陳腐化していきます。

また、当然そのような状況下においても、市場環境に合わせ成功パターンの改善は行うのですが、あくまで既存のやり方をベースにした改善になるため、継続的な成果は出るものの、イノベーションにおける新たな捉え方や切り口は生まれないため、大きな変革は生まれにくいです。

これまでのビジネスにおいては、効率的で事業成長においては良い側面もありましたが、昨今のコロナなどの外部環境の変化など、いつ、何が起こるか分からない状況において、1つの事業に依存しやり続けることは、逆に大きなリスクにもなり得ることがみえてきました。

これは、私自身の経験だけではなく多くの働かれる方にとって起こりうるのではないでしょうか。
では、改めて会社組織としてイノベーションを起こしやすくするためには、考え方のパターンを定義した上で、経営方針を見直す必要があると考えています。

 

知の深化と知の探索

考え方のヒントとして、両利きの経営という経営理論があります。両利きの経営を簡単にまとめると、既存事業の深掘り・最適化と、新規事業のアイデアの探索をバランスよく経営に取り入れることで、継続的なイノベーションと事業最大化を実現しようという考えです。両利きの経営の中で、重要視される考えで、知の深化と知の探索という言葉が定義されています。

 

知の深化とは

自社の持つ一定分野の知を継続的に深掘り最適化していく考え方です。
例えば、既存事業の最適化を行い高い売上、収益の達成を目指し、勝ちパターンを追求する行為が該当します。知の深化の利点は、ある程度収益性が予測可能な点、業務効率が最適化されスペシャリストの育成に優れた点、安定性・効率性が高い経営ができるという点で優れています。

 

知の探究とは

これまでの事業領域や方法に囚われず、未知の領域に対する知的探究をすることに主眼を置いた考えです。うまくいくかは分からない実験を重視し、リスクテイクしながら変化を生み出していくので、普段の業務範囲内では気づけない新たな発見や考え方の醸成をする際に重要です。

 

前述のように、イノベーションとは、ものごとを新しい切り口・捉え方から創出することですが、知と知の組み合わせから創出する方法「新結合」もイノベーションの考え方に含まれます。

例えば、これまで既存のビジネスモデルで培ってきた知識やノウハウと他社や他業界で使われてきた知識を組み合わせることにより、新たなビジネスモデルが生まれることが多々あります。
全てがイノベーションを起こせるような事業になることは稀ですが、得てして、グロースしやすい事業になるのも事実です。
こうしたイノベーションの源泉になり得る知と知の組み合わせを自発的に生む考え方が両利きの経営の考え方の本質に繋がります。

つまり、別領域で知の深化したもの同士で結合させることでもイノベーションは起こりうるので、知の深化と知の探索どちらが優れているかという話ではなく、両方の考え方を明確に定義した上でバランスよく経営に取り入れるという考え方が重要です。

 

両利きの経営の3つのアプローチ

両利きの経営において3つのアプローチが提案されています。

1.事業成長に合わせた深化→探索への移行

一つ目は、既存事業がある程度軌道に乗ってきたタイミングで徐々に新規事業の探索にシフトしていく方法です。小さい会社組織においては、リスクなく推進できるメリットがあると思います。一方で、一度既存事業が軌道に乗り出してしまうと、前述のように成功に依存し始めるため、組織全体としてシフトさせるには非常にパワーがかかる作業で、時間をかけて丁寧に組織理解を深めていくだけでなく、強いリーダーシップが求められます。

 

2.チーム単位で分割し、同時進行で深化と探索を推進

こちらは、既存事業を最適化させ売上を作るチームと、知の探索をするチームでユニット毎に役割を分けて推進する考え方です。日本の大企業のほとんどがこの構造に近いと思います。

この方法は、メイン事業で生み出した資産(無形資産も含め)を有効活用する仕組みや、それをうまく利活用するための組織推進できるリーダーシップが重要です。

しかしながら、プロジェクト立ち上がり当初はうまくいくのですが、知の探索という作業は一朝一夕で結果が出るわけではなく、数年の時間をかけても、結果がでないこともあります。メイン事業で利益を出す事業部からは、コストセンターとして見なされ、亀裂を生み結果を出せないまま撤退を余儀なくされることも多々あります。

 

3.個人軸で深化と探索を行えるような組織設計

個人単位でメイン事業と、それとは別の知の探索をできるように組織設計していく方法です。3つの中では、まだ確立されていない手法になりますが、個人的には最もイノベーションを起こせる方法なのではないかと考えております。

イノベーションを生むことを阻害する要因が、既存の状況から変化が生まれにくくなってしまっている状況であるならば、チーム自体を分ける2番の方法でも成り立ちそうではあるのですが、会社組織は従業員の集合体として成り立つため、個人単位がイノベーションを起こしやすい状況を設計することで、所属するメンバーが固執した考えに縛られない、変化を求める人材に育ち、連続的なイノベーションを起こす組織に変革できるのではないでしょうか。

 

知の探索を推進する具体的な取り組み

chipperでは実際に個人単位で知の深化と探索が行える設計を推進しております。まだどの取り組みが知の探索に繋がるか検証しながら推進しているため、必ずしもいい結果が出るわけはないですが、参考にしてみてください。

 

1.フリーランサーや大手企業の副業人材が自由にオフィスに来社できる取り組み

弊社は、3階建の一軒家を今のオフィスにしています。アットホームかつオープンな環境なので、一緒にプロジェクトを進行するフリーランサーや、大手IT企業の副業人材がフラっと遊びに来ていただけます。普段のメンバーだけだと、どうしてもメイン事業に充てる時間が長くなり知の深化に偏ったコミュニケーションになりがちですが、外部のメンバーが入ってきやすい構造を設計することで、メンバーが社外にもインプットする場を得る事ができるので、単純にノウハウや知識の勉強になるだけではなく、小規模組織だとカバーしきれない新卒育成という観点でも役立っています。

社内でヨギボールームと呼んでいる空間では、自由な会議が開催されます。

 

2.互いに勉強情報をシェアする取り組み

普段の何気ないタイミングで読んでいるネットニュースや興味を持った内容をslackで共有する文化を作っています。普段のメインの仕事に直接的に繋がらない

ことであっても各自が興味関心のある情報を自発的にシェアすることで、互いが何に興味関心を持っているのか知れるだけでなく、他社の勉強した知見を自分も知れるため知識の幅が広がって結果的に新しいアイデアにつながることもあります。

slackの勉強情報のキャプチャ

slackの勉強情報の部屋のやりとり

 

3.メイン事業以外に各自新規事業を持つ取り組み(新卒も含め)

弊社では、メインの新規事業立ち上げやD2Cブランディング支援以外に、メンバーが事業アイデアを考え、実際に自ら推進することを推奨しております。今年の4月入社の新卒であっても同じように進行してもらっております。(インターンの時期から推奨しています。)

この取り組みの良い点は、自らが主体性を持って動かないとビジネスとしてワークしないため、リーダーシップが育成されるだけでなく、あらゆる切り口から知識をインプットする動きが生まれているため、結果的にメイン事業の提案にも結果が表れてきました。

とある上場企業の新規プロジェクトに提案する際に、新卒1年目の社員をメイン担当にし、企画立案から資料作成、営業に至るまで全てを任せてみました。

新卒社員が自らファシリテーションを行い、自分だけでは補えない知識はエンジニアとマーケターを巻き込んでもらいながら、アイデア出しも行い企画書を作成しプレゼンしたのですが、なんと30社近くあったエントリー企業の中から3社だけに絞られる最終選考に残ったのです。(今月末に最終プレゼンがあります。)

もちろん、本人の努力結果ですが、インターン期間から換算してまだ半年しか経っていない短い期間で、面白いアイデアを生み出せるようになってきていることに可能性を感じている取り組みです。

おわりに

外部環境が大きく変化している中で、当たり前だった価値観が崩れ去り、既存の成功だけに依存する在り方から変化が求められる局面にきています。多くの会社が新規事業を立ち上げ既存事業に代替する策を模索されているかと思いますが、単純な事業モデルだけに目を向けず、組織の在り方から考えてみることで新たな気づきが生まれるかもしれません。是非、社員のみなさまを巻き込みながら考えてみてください。