「期待」という言葉を広辞苑で引くと、「将来その事が実現すればいいと、当てにして待ち設けること」このように出ます。
「期待」は、一般的にはこのような意味で使われることが多いですが、ビジネス上では、もう少し実現性を帯びた使われ方が多いです。
ビジネス上で使われる「期待」には、大きく2種類あることを覚えておいてください。
後ほど「自分自身への期待」についても触れますが、一般的な「期待を超える」には、前者の意味で使われることが多いです。
「期待を超える」をもう少し丁寧に説明すると、
「周囲が自分に対して求めていること」に対して「それ以上の行動をし結果を出す」ということです。
これを実現するためのコアスキルが、一つだけ存在します。
「周囲が自分に対して求めていること」を的確かつ迅速に把握する能力です。
当たり前のことのようにも聞こえますが、しっかり理解できてる人はかなり少ないです。
ほとんどの人が、自分の視点でしか物事を捉えられていないから、自分が何を求められているのかを的確に把握できていません。
俗に言う「デキるビジネスパーソン」は、物事を必ず複合的に捉える「他視点思考」が癖ついています。
自らが置かれている状況を、あらゆる視点(=自分、上司、部下、会社、顧客)から常に捉えているため、全体最適の中から自分がやるべきことを、的確に判断することができます
これを身につけるには常に複数の視点を意識をし続けて癖づけるしかありません。
私も何か良い方法がないかと色々と試行錯誤してみましたが、これしかありませんでした。
ビジネスフレームワークではありませんが、「人狼ゲーム」は非常にうってつけな練習方法になります。
「他視点思考」が身に付く観点で人狼ゲームについて簡単に説明すると、
を考え続けないといけないゲームになっています。
このような読み合い系ボードゲームは、他視点思考スキルを身につけるには非常に良い練習になります。
イメージが湧きやすいよう、二つのケースを例にして話をします。
まずは、吉野家です。
吉野家は「はやい」「うまい」「やすい」をコンセプトにしています。
はやい:期待以上の速さで料理を提供!
うまい:期待以上の旨さで料理を提供!
やすい:なのにこの価格!
という感じですね。
(※本記事はあくまでビジネスシーンに向けた記事になっているので、社内コミュニケーションなど必ずしも金額を伴わないこともあるため、今回は「やすい」は省いて解説します。)
「はやい」「うまい」は、言い方を変えると「スピード」「クオリティ」です。
次に、上司から「3日後までに提案資料のたたきをざっくりまとめておいて」という頼みを受けたケースです。
この指示の時、上司はあなたに対して、「いつまでに」「どの程度のクオリティ」の期待をしているでしょうか?
それを考えるための参考として、人間の期待値を図にしてみました。
この図は、横軸が「スピード」、縦軸が「クオリティ」となっていて、6つのエリアに分かれています。
ここから先は、この図を軸に説明していくので、先に6つのエリアについて説明します。
期待以上のスピード・クオリティで資料が納品された時、その行動と結果に対して感動を覚えます。
社内の人に感動してもらうと、「上位の役割・仕事」が来ます。
社外の人に感動してもらうと、「顧客・案件の紹介」が来ます。
※私が実際に体験したことなので間違いありません。
「言ってないけどこれぐらいやってくれたらいいなぁ」と思ってるエリアです。
依頼者の期待の枠からは超えていないため、感動は与えませんが、社会人としては充分なエリアでしょう。
スピードを重視したあまり、質がおざなりになっているパターンです。
「速いのは良いけど…質が粗いから直さなきゃいけない…」のエリアとなります。
ただ、多くの上司はこちらの方が良いと考えています
たとえミスが多くても、仕事が早いことから、修正する時間に余裕を持てるためです。
また、上司も見る時間が取れるかわからないので、ビジネスシーンでは、ケースバイケースではありますが、こちらの方が比較的良いとされることが多いです。
最低限のスピード・クオリティを満たしている状況ですが、「早いけどエリア」より下となります。
期日ギリギリの納品では、ミスがあった場合に修正する時間が設けられないため、上司がミスを直すとになり、最悪の場合このまま提出するしかない状況にもなり得るからです。
「丁寧で質も高くて素晴らしいけど…仕事ちょっと遅いよね…」のエリアです。
このエリアも、まだ信頼を得られていない時期には、一般的にみて評価されにくい傾向にあります。なぜなら、上司の思考ロジックには「安心したい」という感情があり、提出まではずっと「心が落ち着かない状態」のためです。
ヒヤヒヤしてる期間の方が圧倒的に長いため、「ヒヤヒヤした」という記憶が強く残った状態となります。
この提出の仕方は、「クオリティが高く、納期も守って仕事をしてくれる」というポジションが確立するまでは、避けた方が堅実でしょう。
このエリアは社会人以前に、人として論外のエリアです。
質は基準値以下(期待以下の思考レベル)で、スピードは定めた期限以下(約束を守らない、守れない)な状態。
もし社外だったら、一発で取引停止をされてもおかしくないので、絶対にこのエリアにならないよう気をつけてください。
一段上の仕事が舞い込んで来る → 爆速で成長ができる
期待を超えるメリットはたくさんありますが、集約すると、この一言に尽きます。
人間は悪口や陰口が言いたい生き物ですが、同時にあまりに感動を覚えたことは誰かにシェアしたくなる生き物でもあります。
映画「鬼滅の刃」もそうでした。
もちろん原作からファンだった人も多かったと思いますが、煉獄杏寿郎の闘い・生き様に感動した人が周りへシェアをしながら、
何度も劇場へ足を運び「千と千尋の神隠し」の記録を大きく更新し、世の中にムーブメントを巻き起こしました。
同じような事例では、「君の名は。」もそうでした。
「新海誠??」「なんで流行ってんの??」という低い期待レベルで見に行った人は、映画の紡ぎ出す世界観・ストーリーが一気に収束するカタストロフィ・RADWINPSの音楽との親和性に感動を覚え、友人に勧めたくなったのではないでしょうか?
人間は「感動」を覚えた時にシェアをしたくなる生き物です。
口コミなどでシェアをされた結果、その評判はじわじわと広まります。
「君の名は。」は事前宣伝がほぼない状態であそこまで話題になったのですから、シェアの重要性がよくわかります。
期待を超える仕事を続けることで、社内だけではなく果ては社外まで広がります。
そして「何かあった時に頼られる人」になります。
ここまで順番に読んでいただいてお気づきの方もいるかと思いますが、期待を超えることは、当然良いことばかりではなくデメリットも存在します。
メリットとほぼ変わりませんが、期待を超え続ける度にどんどん期待が高くなることです。
「天気の子」がとても良い例です。
内容だけをクローズアップすると「君の名は。」とほぼ同クオリティだったと思います。それでもあれだけのムーブメントに起こらなかったのは、ただただ「期待が高すぎたから」に他なりません。
期待を超えると、人は更に上を期待するようになります。そうした結果「期待のインフレ」が起こり、いつかそのインフレに対応できなくなる日が来ます。
期待のインフレに対応できないと「最近なんか微妙だよね」となりかねません。
ドラゴンボールでいうところの孫悟飯みたいなもんです。セル編で活躍しすぎてそれ以降パッとしなくなりましたよね。
そういった意味で、「期待値のコントロール」は求められる一つのスキルで、コントロールについては別の軸のスキルのため、また別の機会に触れます。
このデメリットへ対応するために常に、「ジャストゾーン」を狙い続けましょう。
ここを常に狙い続けると、良い感じで期待を超えられ、感動を与えられるので、上位の仕事も回ってくるようになります。
速いしクオリティも高く、期待以上でギリギリ感動を与えるラインです。ここを狙って行うのは以上に難しいです。
「周囲が自分に対して求めていること」を的確かつ迅速に把握する能力を非常に高い水準で持ち合わせている必要があります。
つまり、「期待を超え続ける人」とは「周囲が自分に何を求めているか的確に把握できる人」と言い換えることができるかもしれません。
最初であり最大の難関である他視点思考を行う癖が重要と言えます。
序盤に、期待には2種類あるというお話をしたのを覚えていますでしょうか?
A.周囲(上司、部下、同僚)からの期待
B.自分自身(自分から自分)への期待
私は、A(周囲からの自分への期待)<B(自分自身の自分への期待)になるように設定しています。
常に「周囲が理想とする自分」は「自分が課したハードル」の枠内に納めるように周囲の期待に合わせて自分の中のハードルを上げ続けるようにしています。
こうすることで、常に自分の努力は誰よりも高い理想を見据えた物となるので、周囲の期待を下回ることはありません。
=周囲に常に感動体験を与え続けることができます。
今回はCOOである私個人の仕事論(こだわり)のアウトプットでしたが、少しでもお役に立てましたら幸いです。
また、こういった成長をしたいと思っていただけた人材は、ぜひchipperへの応募をお待ちしております。