EC販売が当たり前に行われるようになった昨今、これまで主流だった卸売をメインとしたメーカーとしての販売方法だけでなく、自社ECサイトやAmazonや楽天、Yahoo!に代表されるECモール(以下、ECサイトと表記)を利用したネット販売が商流に加わりました。さらに、「D2C」という言葉が浸透しつつある昨今、また新たなビジネスモデルを考えていく必要があります。
今回は、このこれまでの3つのモデルケースとD2C時代におけるビジネスモデルを紹介していきます。
まず第1モデルとしては、卸をメインに小売店や実店舗での販売を行っていた店舗が、新たな販路としてECサイトの運用に乗り出すケースがあります。
こういったケースの店舗は、既存の媒体が90%以上の非常に大きいウエイトを占めており、商品内容や価格設定に対して実店舗販売との差をつけることが難しいことが多々あります。そのためネットでの販売力は低いケースと言えます。
次に第2モデルとなるのが、実店舗とECサイトの運用割合がおよそ半々になるケースです。
商品の内容は実店舗とECサイトで相違はありませんが、価格設定などで消費者に寄り添った独自のサービスを展開していることが、特徴として挙げられます。この消費者重視の観点から、返品などの様々な問い合わせや、購入者特典、ポイント還元といったサービスでも、実店舗と遜色ない対応をしているメーカーが多くあります。
最後に、第3モデルにあたるのが、ECサイトをメインの販売経路と位置付けているケースです。
日本ではまだ第1モデルと第2モデルのメーカーの割合が多い状況ですが、例を挙げると「ボタニスト」や「アンファー」「フルーツ青汁」といったメーカーに見られるような、高単価・高品質な商品を、販売訴求力の高いオファー用サイトや特典を用意し販売することで、消費者に実店舗以上の購入体験を届けているのが特徴です。
また大手の化粧品メーカーでも、ターゲットを明確に設定し、さまざまなデジタルデータに基づいてネット専用商品を開発・販売するなど、確実に第3モデルのメーカーが台頭してきていると言えます。
モデル1 | モデル2 | モデル3 | ||
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特徴 | 1:卸売が商売のメイン。 2:ECはあくまで販売チャネルの1つとして運営 3:商品やサービス価値は小売流通のものと同じ |
1:卸売とECの優先度はほぼ同じ 2:販売チャネル間の衝突は気にせず、 消費者重視でチャネル運営 3:サービス価値で実店舗販売と差別化 |
1:ECをメインチャネルとして運営 2:ECのみで販売する商品企画開発 3:自社ロイヤリティプログラムなどを実施 4:実店舗以上の購入体験を提供 |
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EC売上比率 | 5%ほど | 10 ~ 30% | 70 ~ 100% | |
ECマーケティングコスト | 売上比:10% | 売上比:20 ~ 30% | 売上比:30 ~ 50% | |
EC売上 | ~ 1億円/年 | 1 ~ 10億円/年 | 3 ~ 100億円/年 |
これまで紹介した3つのモデルケースは、実店舗販売からネット販売へと販路が広がっていく動きでしたが、現在では新たな流れも登場してきています。
第3モデルで紹介した、ECサイト主体でネット販売の売上を伸ばしてきたメーカーが、実店舗でも販路を広げていく、いわば逆輸入のような流れの第4モデルです。
例えば、「MEDULLA」というカスタマイズシャンプーのブランドメーカーは、ビジネスモデル構築段階から、顧客データを取得できる仕組みを構築し、オフラインでの販売においても販売先にメリットがある構造(美容師の商品紹介制度など)を構築することにより販売の効率化を図り顧客獲得コストを低く販売することを実現されています。
若い世代を中心に、実店舗からネットへと消費者の購入場所が変化してきている中で、ネット販売におけるメーカーと消費者の物理的な接点は、商品自体や箱など梱包のみとなっています。
顔が見えない相手だからこそ、届いた商品を開封した際に五感に訴えかけるような工夫を凝らし、パーソナライズ化したブランディングを行っていくことで、本物の「D2C」ブランドとして消費者の心を掴むことができるのではないでしょうか。
今後1~2年のうちに、日本でも第3モデルのメーカーがひしめき合うようになるだろうと言われています。
さらに第4モデルのように、ECとオフラインの親和性の高いモデルを構築して、ブランド展開されるメーカーが増えると、第1モデルや第2モデルのメーカーにとっては非常に強い逆風になります。
自社ブランドを伸ばし、さらなる成長へと導いていくためには、消費者がもっとも時間を費やしているネット販売のマーケティングを今からしっかりと行っていく必要があります。
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