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組織構築をしていく上で、管理職が発揮するべき「リーダーシップ」は当然欠かせない概念ですが、同時にメンバーが発揮する「フォロワーシップ」も近年注目されています。
本記事では、フォロワーシップについて解説をさせていただきます。
そもそもフォロワーシップとはなんでしょう?
汎用的な定義としては「組織を成功に導くために、リーダーや他メンバーに対して主体的に支援するためのスキル」のことです。
源流をたどると、1993年にカーネギーメロン大学のロバート・ケリー教授が提唱している概念で、こちらの本で紹介されています。
本書では組織においてリーダーの影響は10%〜20%、フォロワーの影響が残り80〜90%と提唱しており、組織の成功のためにはフォロワーシップが必要不可欠であると提唱しています。
また、リーダーという立場の人も、見方を変えれば必ずフォロワーとなる(課長は部長のフォロワー、部長は役員のフォロワー、役員は社長のフォロワー)ため、どの立場の人でも持っていなければいけないスキルと考えられています。
ロバート・ケリー教授の理論では、フォロワーは主に5つのタイプに分かれています。
本記事では、まずはタイプ別の対応方法・成長方法について解説します。
次にフォロワーシップを構造分解すると「基礎スキル」「マインドセット」「行動」に分かれるため、それぞれについて解説し、最後に組織への浸透方法について触れます。
フォロワーシップは、「依存度」「積極性」の二軸で5つのタイプに分類されます。
ロバート・ケリー教授の著書で「独立型」「依存型」という表現をされている部分については、「依存度」という日本語訳で記事を書かせていただきます。
例えば積極性が高い状態での批判は「組織のための建設的な批判」となりますが、消極的な状態での批判は「組織に対しての文句」となり、組織を崩壊させる危険性があります。
5つのタイプそれぞれについて、特徴と対応方法について見ていきましょう。
主体的、かつ積極的に動ける、最も理想なフォロワーシップです。
このタイプまで成長している人材に対しての対応は、基本的に「リーダーの対等の存在として扱う」「意見を受け入れる」「一任する」という対応を行うことで、さらなるパフォーマンスを発揮してくれます。
また、次期リーダーとしての素養もあるため、今後の成長のためにもリーダーとしてのポジションを任せることで、さらに組織が成長します。
基本的にはこの対応を目指していきます。
組織への貢献は消極的だが、非依存型(=批判はする)という評論家タイプです。
批判は行うが組織へのエンゲージメントが低いため、自らは積極的に動きません。そのため、他者と対立したり孤立したりする傾向があります。
このタイプを「模範型」に育成するためには、非依存であることから、組織や事業の課題を俯瞰して見る力はあるため、その力をどう活かすかが課題となります。
孤立型は、良くも悪くも属性として利己主義であるケースが多いため、その特性を活かしながら信頼関係を築き、エンゲージメントを高めることが重要です。
目的意識や志向性(Will)は存在する傾向がるため、そのWillを組織の中での貢献という部分と紐付けるようなコミュニケーションをしていくことで、模範型へ成長しやすい傾向にあります。
具体的な方法論としては、本記事の最下部で解説します。
指示されたことに対して積極的に行動はしてくれますが、建設的な意見は発信しない、いわゆるイエスマンタイプです。周りからは「素直で真面目な人」と捉えられることが多いです。
指示通り都合よく動いてくれるので、古い体質の企業ではこのタイプが重宝されるケースが多いですが、順応型が多い組織は発展性・拡大性という観点で期待値が低くなります。
このタイプをリーダーが優遇してロールモデルとしまうと、間違えた指示に対しても一生懸命頑張ることが正しい、という組織となってしまう危険性があります。
このタイプを「模範型」に育成するためには、彼らの中にある「反論をしてたら評価が下がる」という不安感を取り除いてあげることが肝要です。
上司やクライアントの言う通りにするのが最も自分にとっても利があるという考えを取り除くような考え方に変革してあげる必要があります。
「言うべきことを言っても評価が下がらない。むしろ言うことが期待されている」という組織文化を作っていくことが重要です。
こちらも具体的な方法論としては、本記事の最下部で解説します。
あきらめ労働者タイプです。
自ら考えることをせず、指示されたことを嫌々ながら最低限こなすだけの人々です。最もフォロワーシップと対極にいる存在です。
このタイプが組織の中で多数を占めているケースは、組織としてほぼ成立していない状態となるため、あまり想定していません。
そのため、組織の中でも少数であることを前提として、1to1コミュニケーションを行うことが必須となります。
少し性善説寄りな考え方ですが、「何も向いていない人」であればおそらく組織に採用をされていないため(本当に何も向いていない人材だとしたら、採用段階での処置を早々に行うことが急務です)、対応方法としては様々な仕事を任せながら、順応型が発現するか孤立型が発現するか実務型にスライドするかを観察するのが最初のステップとなります。
発現するタイプを見極め、速やかにそのタイプに合わせた対応方法へとシフトすることが必要です。
また、仕事を依頼する際は、目的や背景も含めて、依頼の意図、具体的な期待しているアウトプット物を細かくコミュニケーションを行うことが必要です。
チームへの貢献意欲もそこそこ、問題提起や提案もそこそこ、周囲からは「バランスが良い」と映る反面、平凡であるという評価をされがちなタイプです。
このタイプの根底には「保身」があります。責任を負いたくないという考え方となっています。
一方で孤立型と異なり、自分の「Will」が見えていないケースが多いため、「Will」を引き出してあげるようなコミュニケーションが必要です。
「Will」が見つかった後には、あえて責任を負わせ、責任を乗り越えた成功体験を積ませることで協働型へと進化していく可能性が高くなります。
Willの具体的な見つけ方については、本記事の最後で触れます。
次に、フォロワーシップを発揮するために必要なスキルセットをまとめさせていただきます。
「ステークホルダー」という言葉からは、一般的に社外を含めた利害関係者というイメージを想起しますが、このケースでは社内向けという定義でも構いません。
目的としては「自分が行う仕事の全体像を把握する」ことです。
全体像を把握するために、仕事やプロジェクトに対して「ステークホルダーは誰か」「そのステークホルダーにとっての利害は何か」「そのステークホルダーにとっての驚異は何か」を把握することがフォロワーシップの第一歩となります。
次に、その把握した全体像を正しくアウトプットをするスキルが必要です。
5W1Hはビジネスフレームワークとして良く聞く用語と思いますが、6W2Hはそれに加えて「Whom(だれに)」と「How much(いくら)」を追加し、それぞれの頭文字をとった略称です。
When: いつ
Where: どこで
Who: だれが ★
Whom: だれに ★
What: なにを
Why: なぜ ★
How: どのように
How much: いくらで ★
★の部分は、前述のステークホルダー理解ができて初めてアウトプットできる部分です。
リーダーが正しい情報をベースとした判断を行うためにも、これらの要素を全てアウトプットできるように情報把握をする必要があります。
同じくビジネスシーンでよく使われるフレームワークであるPDCAという言葉ですが、株式会社ZUUの冨田代表が書かれているこちらの本では、現代のPDCAのAはAction(改善)ではなくAdjust(調整)であると説いています。
マインドセットの中でここが最も重要です。
フォロワーシップを発揮できる人材は、「この仕事は何のために行うのか」を意識し、不明な場合はリーダーに確認を行います。
リーダーもわかるだろうという思い込みの下、フォロワーに対して説明をしないことも多いため、推察する力と、不明な場合は確認をする行動が必要となります。
ただ、推察を行うことは容易ではありません。ここで前述の「ステークホルダー理解」と「6W2H」の基礎スキルが必要となります。
ステークホルダーを理解し、6W2Hで報告ができる状態になることは、仕事の全体像を理解することに等しいです。
そのため、目的を常に意識するためには、この2つの基礎スキルが必要となります。
また、目的を意識することで仕事のアウトプットや調整(Adjust)方法も良い方向へ変わってきます。
例えばですが「取引先顧客リストを作っておいて」という依頼が来ましたが、リーダーからは特に期限の提示がなかったとします。
さて、いつまでにこの仕事を片付けるといいでしょう? そしてどのようなリストにするといいでしょう?
結論としては、このクライアントリストを作る目的が何かによって、仕事の優先順位や内容が変動します。
このリストを作る目的が「明後日の経営会議で使いたいから」であれば、今ある仕事を早々に調整し、明日までに完了させなくてはいけません。
このリストを作る目的が「クライアントごとの売上が分析したいから」であれば、ただ単にリストを作るだけでは足りません。売上データも調べてリストに入れ込んだり、後で別データとExcelで突き合わせるために、顧客ごとのExcelで管理している番号を入れ込んでいく必要があります。
仕事の目的を把握するクセをつけておくことで、リーダーの求めるアウトプットを正確に行うことができます。
加えて、協働型フォロワーはリーダーの良き理解者でありパートナーとしての役割となります。
そのため、”本当にこれでいいのか?”という前向きな疑問と建設的な意見をリーダーに提起することで、組織を最適化する役目も持っているのが優秀な協働者としてのフォロワーとなります。
協働型フォロワーは、業務の依頼があった際、リーダーからどういう意図で自分に依頼が来ているかを考えます。
リーダーはNoと言うことを望んでいません。個人が処理をするというだけではなく、その人がその仕事をどう他人を巻き込んで、リーダーの求める形まで持っていくかを見ています。
そのため、フォロワーの仕事はNoと言うことではなく、「どうやったら実現できるか」という視点で組織にとって最も最良の回答を導き出します。
協働型フォロワーは、ゲームのルールを変えることは容易ではないことを知っています。
そして「生産性のない行動は意味がない」ということも同時に知っています。
状況によっては、ルールを変えるべき(変えなくてはいけない)こともありますが、変えずにスピード優先で行った方がいいことの方が多いです。
協働型フォロワーはそのバランス感覚を持ち合わせています。
協働型フォロワーは、個人の視点で物事を見ず、組織俯瞰の視点から物事を見ます。
リーダーは高い確率で、組織全体のあるべき姿からブレークダウンして、業務にあたっています。(そういった考えができる人がリーダー職に任命されます)
そのため、必ずリーダーの依頼には組織全体から鑑みた意図があるものとして、依頼内容をリーダーの視点で見てみて、リーダーの意図を汲んでください。
また、時にはリーダーからの依頼には、リーダー自身の価値観・人生観がバイアスとしてかかっていることもあります。
そこも含めて意図を汲み取るのもフォロワーの役割となります。そのため、リーダーとの相互理解をするためのコミュニケーションを積極的に行い、リーダーの価値観を理解し、リーダーのパートナーとしての役割が協働型フォロワーの役目です。
リーダーも完璧な判断はできません。
そのため、リーダーの意図を汲んだ上で、(批判や文句ではなく)前向きで建設的な提言をすることも協働型フォロワーの役割です。
前向きで建設的かどうかの基準として、下記2点を基準とした提言かどうかが挙げられます。
リーダーが細かく見れる限界の人数としては5〜7人と定義されており、これを超えるとマネジメントパフォーマンスが極端に落ちるという研究結果が発表されています。(「スパン・オブ・コントロール」と言います)
※Google社では、1-3-9の組織が理想とされております。
リーダーの想いや組織に対しての考えを波及させるためには、優秀なフォロワーのサポートが不可欠です。
一人ひとりの感情やバックボーンに根ざしてチームに波及するために、リーダー一人では及びきれない範囲をサポートし、チームに良い影響を及ぼすことが協働型フォロワーの役割となります。
コンピテンシーとは、理想とする行動特性のことで、ステートメントとは発声・声明のことです。
会社やポジションによって、理想とする行動特性が異なるため「高業績者の共通特長」を洗い出してコンピテンシーを定義することが多いです。
このコンピテンシーを定義する理由としては、行動基準や評価基準を明確化することで、フォロワーが「こういう行動が望ましいんだ」という共通理解をすることで、全体の行動の質を上げることができます。
注意点としては2点あり、1点目はリーダー自身がそういった行動を行っていく必要があるということ。
これはリーダー自身が「自分は例外だ」としてしまうと、フォロワーのエンゲージメントが著しく下がってしまう悪影響があるためです。
決めたコンピテンシーに対しては、リーダーこそがモデルケースとして自身を律していく必要があります。
2点目は「人によって解釈が異なるような内容を定義しない」ということです。
例えば弊社が社内のコンピテンシーを決める際に却下になった案として「グローバルマインド」というDNAに対しての「多角的視点と多角的思考」というコンピテンシーがあります。
「多角的視点」という言葉には人によって様々な解釈が生まれるため、ボツとなりました。
代わりに定義したコンピテンシーが「海外で仕事をして暮らせるくらいのスキルや実績を身につける」でした。
これも当然解釈は多少の前後は生まれますが、海外で仕事をして暮らすために必要なスキルは人によって方向性は異なるので、多少の解釈の相違が発生しても問題がないコンピテンシーとなっております。
参考までに、弊社内部で定義しているコンピテンシーの例をいくつか挙げさせていただきます。
弊社ではこのようなコンピテンシーを20個ほど定義をしており、行動指針として各メンバーに共有し、評価指標として利用しております。
次のステップとして、個人の「こうなりたい=Will」とコンピテンシーを紐付けます。
これは、フォロワー個人のワークとすると紐付けられないケースが多いため、リーダーが伴走して紐付けてあげてください。
手順としては、
1.フォロワーと1on1面談をする
1on1面談は、心理的安全性が最重要です。
何を言われても相手の言うことを否定せず面談をすることで、心理的安全性を高めてあげてください。
2.Willを引き出す
Willにはリーダーの主観は入れずに「一緒に探す」ことに注力してあげてください。
Willが出てこない人に対しては、逆説として「何がしたくないか」「どうなりたくないか」を聞き出して、そこからWillを探してください。
3.コンピテンシーを実行することで、Willにどう近づけるかをイメージさせる
コツとしては「それを実現した状態に貴方はどうなっている?」という、実行した時のイメージを高めさせる質問をすることです。
4.コンピテンシーに則った具体的な目標設定をする
これらのワークを行うことで、既に実行できているコンピテンシーと、実行ができていないコンピテンシーが現れるはずです。
実行できているコンピテンシーに対しては、それをさらに高め、みんなの規範となることを前提とした行動目標、
実行できていないコンピテンシーに対しては、実行するための具体的な行動目標レベルまで落とし込んでください。
これらは、日次レベルでの行動目標であり、観測が可能な定量目標とすることが望ましいです。
これら一連のステップをフォロワー単位で行ってください。
最後のステップとして、会社で定義したコンピテンシーに則った行動を取ったメンバーは、必ず見えるように称賛をしてください。
承認欲求のない人間は存在しません。
全メンバーが見える状態での称賛を行うことで「こういう行動をすると褒められるんだ」という心理的刷り込みが発生し、徐々に同様の行動を取るメンバーが増え始め、いずれそれが企業文化となります。
今回は組織グロースのために必要な「フォロワーシップ」についてまとめさせていただきました。
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④ これからのマーケティング戦略
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⑤ EC事業構築の考え方
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